100本の鉛筆
部活動
私は部活動をしていない。

中学に入学した時、本当は吹奏楽部に入りたかった。

幼い頃、母と通った音楽教室はとても楽しく、唯一と言っていい、私の幸せな思い出だ。

だけど、私は吹奏楽部には入らなかった。

吹奏楽部は、他のどの部活動より部費が高い。

楽器の維持費や、コンクールなどの演奏活動のために楽器を運搬する運送代、各楽器ごとに先生を呼んでのレッスン代。

必要経費が多いのだ。


だから、私は、中学では部費が不要な文芸部に籍を置いた。

本が嫌いなのに。


そして、それは、高校でも続けている。

文芸部の活動は、文化祭で配布する文集の作成のみ。

本当に好きで文芸部に入っている子は、小説を書く。

私のように仕方なく文芸部に籍を置いている子は、書いたという実績を作るためだけに、詩や短歌、俳句などを書く。


だから、私の部活動は、文化祭前の1週間のみ。

30分で考えた適当な詩をパソコンで打ち、他の子の作品とともに100部ほど印刷して、製本する。

そして、それを当日、「ご自由にどうぞ」と書いた立て看板と共に、図書室前に積み上げておく。


だから、私は授業が終わると、毎日、部活動に勤(いそ)しむことなく、真っ直ぐ希望書店に向かう。

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