■捕らわれの男■
流出
男は家に帰るなり熱いシャワーを浴びた。かつて愛した女の血が流れてゆく。時折熱で凝固したものが足元に漂う。


まるでそれは男の周りをさ迷う女の霊の様でもあった。



この出来事は男の時間軸の紐に、堅く決して解ける事の無い結び目を付けた。


手繰り寄せれば手に違和感を覚える。繰り返しの毎日に付けられた小さな違和感。


けれども、それすら男にとってはほんの些細な出来事。



愛した女を殺めたというのに。



そんな自分に嫌悪する自分もまた真であった。



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