好きになっては‥‥いけない人

芹那·····

大輝から荷物を宅配で送ると
連絡がきたから
「引き取りに行く。」
と、言った。
我が儘だとわかっているが
「最後に一緒に過ごした部屋を見ても
いいでしょ。」
と、言うと
大輝は、
「わかった。」
と、言ってくれた。

だから、私は
金曜日の仕事の帰りに
大輝のマンションに寄った。

私の荷物は、箱に納められていた。

3つある箱を見ながら
こんなにあったのかと思う気持ちと
本当に綺麗に片付けられてると
言う寂しい気持ちで一杯だった

大輝に必要ないものがあるなら
廃棄するからと言われて
箱の中身を確認していると
大輝の携帯に着信があった

ちょっと待っててと言って
その場から離れる大輝

私は引き続き確認をし、
確認が終わってから
各部屋を見て回った・・・
ここで料理して
一緒に食事して一緒に寝て
脱衣所·····や·····お風呂······

大輝の話し声が微かに
聞こえてきた・・・

声のトーンがすごく優しい
私と話しているときと
まるで・・違う・・
あ~あ、きっと‥‥彼女だ······
と、思っていると······


「めい、愛してる。」と·······


えっ、めい?
今、めいと言った?
嘘っ、違うよね
そんなことないよね
ニックネームかもしれないし
名前を短縮しているだけかも
まさか、そんな事はないと
そんな事があるはずないと
思い直して
大輝と一緒に荷物を持って
マンションに送ってもらった。

愛してる‥‥‥かっ
一度も言われたことなかったなぁ
と、心が折れそうだった。

のろのろと箱を部屋の中に
運び入れて
中身を出していく
これも・・あれも・・と
思い出すと涙が溢れてくる

大輝に・・・
もちろん、どこに引っ越すのか
聞けなかった。
聞いても教えては
もらえないだろうが・・

そのときに着信が・・
「・・もしもし」
「芹那?」
「うん、お母さん?」
「そうよ、あなた、このところ
帰ってこないから
心配になって。」
「あっ、ごめんね。
お母さんっ······私······
帰ろうかな?」
「‥うん。たまには帰ってきなさい。
お父さんは、いないけど
ゆっくりしよう。」
「うん、お父さんは仕事?」
「そうみたいよ。」
「花は?」
「花は、今日勤務だったから
今、お風呂に入ってるの。」
「花、仕事だったんだ。
じゃね。
朝の内に帰るね。」
「わかった、気をつけてね。」
と、母と話して
電話を切った。

鼻声だったから母に泣いていた事を
知られたかもしれないが
母は何も言わずにいてくれた。

お母さんに甘えて
日曜日の夕方にマンションに戻ろう。
< 20 / 56 >

この作品をシェア

pagetop