甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「私、今から間宮さんの職場に行く予定しているんです。その書類、よかったら私が渡してきます」

握りしめた手の平にはじとっと汗が滲んでいた。

「いや、いいよ。俺が頼まれたんだから。車も下に置いてあるしすぐに届けるよ」

田丸さんは私を押しのけて部屋から出て行こうとした。

「ちょっと待って!」

私は慌てて彼の腕をぐっと掴む。

田丸さんは、掴まれた腕に目をやり、そしてニヤッと口元を緩めて私に顔を向けた。

「なに?ひょっとしてそんな泣きそうな顔で俺を挑発してんの?」

彼は私の握った腕を振りほどくと、私の襟足を強く掴み自分の顔に引き寄せた。

途端にぷーすけが激しく吠えだした。

「ほんと、うっせー犬」

田村さんは舌打ちすると、ぷーすけを部屋の外に足で蹴り飛ばし、その扉をバタン!と勢いよく閉めた。

「ぷーすけ!」

扉の向こうで再び吠えながら、がりがと表面をひっかく音が響く。

薄暗い彼の部屋の中に彼に首を掴まれたまま向き合っていた。

「あんなすごい彼氏がいるのに、そんな色っぽい目で俺を見てきて、お前も好きものだな」

「ち、違います!」

田村さんの細い目をにらみながら叫ぶ。

「何が違うんだよ。君から俺にスキンシップしてきたんだぜ」

彼の顔が私の耳元に近づき、生暖かい息がかかる。

「書類はあきらめてやるよ。その代わりここで楽しませてもらうか」

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