甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
これは一体どういうことになってるの?

体中が震えている。

怖い。抵抗したいのに体が動かない。

いやらしい目つきで私の顔を舐めるように見つめながら、ごつごつした彼の指が私の頬の輪郭をなぞっていく。

「ほんと、かわいい顔してんな。どうせ何人もの男に抱かれてきたんだろ?一人増えるくらいどってことないさ」

そして、その指が私の唇の上で止まった。

「彼のために……後先も考えずに飛び込んでくるって感じ。そういうの、たまらないねぇ」

田丸さんのニヤッとした唇が近づいてくる。

「……いや」

ようやく声が出るも、体がこわばって力が出ない。

空しくぷーすけの鳴き声だけが部屋に響いてる。

彼のために?こんなこと、彼のためになるの?

「やめて!!」

私はありたっけの力を振り絞って、彼の胸を押し返した。

まさかの急な抵抗に、彼も不意を打たれたのかそのまま後方によろける。

私はその隙に部屋を出るため扉の取っ手に手をかけた。

それなのに、瞬時に体勢を立て直した田丸さんはすぐに私の体を後ろから羽交い絞めにしてきた。

「お前も往生際が悪いな。大事な彼氏のためだろう?それともこのまま俺を返して彼の未発表デザイン画を横流ししてやろうか?」

やっぱり、そうだったんだ。

「あなたは一体何者なの?」

「俺?野暮なこと聞くね」

彼は私の耳元でくすっと笑う。







< 189 / 233 >

この作品をシェア

pagetop