甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「あ、来た来た」

間宮さんはそう言うと、笑顔のままベンチの後ろに視線を向け手を挙げた。

来たって誰が?

思わず私は彼の視線を辿って体を後ろにねじった。

そこには透き通るように白い肌をした美しい女性が手を振っていた。

肌の白さを一層際立たせるような淡い水色の花柄のワンピースが風に揺れている。

目深にかぶったつばの広い白い帽子が風で飛ばないよう右手で押さえながらこちらにゆっくりと近づいてきた。

私よりもずっとふわふわのウェーブを利かせた髪は、自分にはない大人の色気を嫌でも感じさせる。

お化粧なんかほとんどしてないようなすっきりした顔立ちに、すっと流れるような美しい目の奥にある薄茶色の瞳が優しく微笑んだ。

「申し訳ありません。ぷーすけをありがとうございました」

その女性は私のそばまで来ると繊細な声でそう言い、彼に顔を向け口元を緩めた。

「樹さんもありがとう」

「今日はぷーすけも十分走ったから、このまま抱いて帰るよ。また逃げ出されたらたまらない」

間宮さんはそう言って苦笑すると、「それじゃ」と私に頭を下げその女性と二人並んで公園の小道を進んでいった。

二人の足音が次第に遠ざかっていく。

ふぅー。

一気に体中の緊張が緩んでベンチにもたれた。
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