甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「『パーソナル・サポート・エブリシング・M』?」

「個人でやってるみたいだけど、父親が言うにはすごく感じよかったって」

「ふぅん」

そんなところにわざわざ依頼するほどのことなんてきっとないだろうなと思いながらも、手帳に社名だけ書き込んだ。保険はとりあえずないよりはあった方がいいから。

しばらく弥生とたわいもない話をしていたら夜も更け、終電間近になったので名残惜しくも店を出る。

今度会えるのはいつだろうと思いつつ、対岸のホームから電車に乗り込む弥生に手を振った。

でも、弥生とは会えなくてもずっとつながってる、そんな気がしてる。

少し酔いが回って気持ちよくなりながら、家の玄関を開けソファーにバッグを置き、自分も腰を下ろした。

ふぅ。

そういえば、明日は立ち寄りだったわね。

大事な封筒、忘れないようにちゃんと目につくところに置いておかなくちゃ。

って、……封筒、封筒。

封筒?!

「ない!」

夜中だということも忘れて思い切り大きな声が出てしまった。

会社を出るときはしっかりと胸に抱いた封筒が、今この場所にはその存在のかけらすらない。

どこかに忘れてきた?

電車の中?

もしや、あのお店?

時計を見たらもうすぐ0時を回るところ。

慌ててお店に電話するも誰も出ない。もうお店は締まってしまったんだろうか?

体中から変な汗がにじみ出てきた。

どうしよう。

大事な、間宮さんのデザインの校了が入った封筒なのに。

今日はついてるなんてとんだ勘違いだったのかもしれない。
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