甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
焼けたトーストにバターを塗り、熱々の紅茶と一緒に流し込むように食べる。

朝はトーストだけでなく、ゆで卵も作って食べていきなさい、と母から言われていたけれど、朝の忙しい時にゆで卵なんて悠長に作ってる時間はない。

一人暮らしを始めてから、少しずつ両親の言葉が自分の中で薄らいでいくのを感じていた。

最後の一口をほおばり頭上の掛け時計に目をやると、出発時間ぎりぎり。

食べ終わった皿を流し台に置き、ソファーの上に転がっていたバッグを引っ掴むと慌てて家を飛び出した。

最近いつもこうだ。

春から夏にかけてのけだるい季節は体が重たくて、すべての動作が遅れ気味になる。

普段運動なんかしていない私は駅までの道のりを走り続けるなんてことは到底できるはずもなく、途中であきらめて速度を落とした。

必要以上に荒くなった呼吸をなんとか治めつつ、ようやく駅に着き改札をくぐる。
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