勇者のための聖女
聖女の使命

聖女エルミナージュは勇者の望みを全て受け入れるよう幼い頃から教育を受けてきた。

「勇者様、今日も貴方様のお陰でこの世界が平和な1日を過ごす事が出来ました。どうぞ私に何なりとお申し付けくださいませ。」

魔王討伐の道中。
この世界では魔王を倒してもまた数年すれば新しい魔王が現れる。

勇者と聖女は今晩泊まる部屋に2人きりだ。

この旅は他にも魔導士、剣士、エルフも合わせた5人であるが、毎回泊まる部屋は勇者と聖女が決まって一緒であることは暗黙の了解であり、毎回聖女が悩まされる案件だ。

今回の宿は割と質の良いところだったようで、壁も薄くはなさそうであり、ベッドもしっかりとしていて聖女は少しだけ安心していた。

勇者の前に膝まづいて頭を下げる聖女のプラチナブロンドのふわふわとした髪に男らしい無骨な指が触れる。

「ミーナ、そういう面倒な前置きは必要ないと何度言わせたら分かるんだ。」

髪に触れていた指はそのまま聖女の頬へと辿り着くと、大切な宝石に触れるかのように撫でた。


それを合図として、聖女は下げていた頭をゆっくりと上げる。

エメラルドグリーンの瞳は不安げに潤み、勇者を真っ直ぐに見つめた。それが更に勇者の機嫌を損ねることを聖女は未だに理解出来ていないようだ。

勇者は諦めたように聖女から指を離す。



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