図書館
図書館
「部屋にステキな本がたくさんあるの。
一生かかっても読めないくらい。
ああ、まだ読みたいなって思いながら、
おばあちゃんになって、死んじゃうくらい、
面白い本やステキな本がたくさんあるの」

あいつはいつも、その夢を語った。
その夢はきっと真実だったのだろう。
それは本当に夢なのだろう。

なら、その夢をおれが叶えてやろう。

それが夢なら、おれがあいつの夢を叶えれば、
あいつはきっと帰ってくる。

そしてあいつは本を読むんだ。
もう、おれのやりたいことなんて、
あいつは無理をして一緒にやる必要はない。

ただ、あいつの好きなことをしていればいい。

それでも、あいつが帰ってきてくれれば、
それでおれはきっと幸せなんだ。

おれは自宅の近くに家を借りた。
そこに、あいつの希望通りに、
全ての部屋に本棚を付けた。

階段の前には、あいつの好きな
フランスの画家の派手なポスターを飾った。

それからおれは、週に一度、
本を買う以外に家を出なかった。

食事は全て出前で済ませた。

帰ってきたあいつと、
二人で座るつもりのソファー。
それに腰掛けてただずっと、
ただひたすらに本を読んだ。

多分、図書館を作っても、
それだけじゃ、おれには意味がない。

あいつが驚くぐらいおれが本を読んでいれば、
あいつもおれを見直してくれる。
その日をいつも想像して
おれはいつも本を開いた。

週に一度、本を買いに行く日は楽しみだった。
この本を、あいつはもう読んでいるだろうか。
この本を読んでいれば、
あいつはおれを認めてくれるか。
この本は、おれからあいつへのメッセージだ。

思いを胸に、おれはダンボールに一箱、
毎週本を買った。

そして、おれは本を読んだ。


< 18 / 24 >

この作品をシェア

pagetop