桜の木に寄り添う

突きつけられる現実

エレベーターで会った可愛い女性は、ソファに座りゆっくりと振り返った。

「 こんにちは。お話が会ってきました 」

 よっちゃんは、ヒロキの妹だよと私に耳打ちした。
 妹……たしかに妹がいたのは知っている。

 私にどんな話があるのだろう。
 ヒロキくんに話を色々聞いていたりするのかな。

 私は彼女の側まで車椅子を押してもらった。

「 急にごめんなさい。兄が何も話ししてくれないものですから 」

「 いや、こちらこそ。マンションをお借りしてしまって…… 」

「 そういうのはいいんです。私が知りたいのは兄との関係なんです 」

 私とヒロキくんの関係……
 どういうことなのだろうか。

「 兄とはお付き合いされてるんですか? 」

「いえ……そういうわけでは…… 」

 彼女は安心したような表情を私に見せた。

「 良かった。兄はてっきりあなたとお付き合いしてるのかと。まさか好きとかじゃありませんよね? 」

「え? 」

「 兄はあなたといて幸せになれますか? 」

 ……私は悔しいけど何も言い返す事が出来なかった。
 私といることで、ヒロキくんの負担になってしまうかもしれないからだ。

 それだけを言い残し、ヒロキくんの妹は出て行ってしまった。

 よっちゃんは、その話を全部聞いていた。

「 なつ……? 」

 よっちゃんは、心配そうに私の前に座り私の顔を覗いた。

「 全然大丈夫だよ! 」

 私はそう強がって見せたけど、涙が溢れてきてしまい誤魔化すことが出来なかった。

 ポンポンと無言で私の頭を撫でてくれた。

 私は堪えきれない涙を流し子供のように泣き始めたのであった。

 自分じゃ幸せにしてあげられる自信もない。
 見えないようにしていた現実を突きつけられたような気持ちでいっぱいになってしまった。

 私は自分のことしか考えていなかったのかもしれない。

 突然の出来事ではあったが、あの言葉は私の胸に鋭く突き刺さってしまった。
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