桜の木に寄り添う

思いがけない出来事

よっちゃんと約束の日。

 前に安西さんと一緒に行ったカフェに行った。


 自動ドアを開け、奥に進んだ。


 奥に進んだ先には、私よりよっちゃんは早く来ていた。

「おせーよ!」

「 ごめん、ごめん 」

 今日のよっちゃんは、少しいつもよりかっこよく見えた。
 お洒落をしていた。

「 ここのクロワッサン食べたかったんだよね 」

 いつもと変わらない様子。

 今日はなんで呼び出されたんだろう。

「よっちゃん、どうしたの?」

 私がそう言っても、よっちゃんはべつにー。

 と言っていた。

 クロワッサン食べたかった、本当にそれだけの理由なのだろうか。

 多分違うだろうなというのは予想はついていた。

 同窓会のあの日……。

 よっちゃんは、私に周りの人に聞かれないような声で言ってきたからだった。

 そしてやっぱり、よっちゃんは、お茶じゃ耐えられなかったのだろう。

 しばらくして、コウちゃんのバーに行こうと言われた。

 バーについて、すぐによっちゃんはいつもより強いお酒を飲んでいる。

 少しお酒を飲んで酔いが回ったところでよっちゃんは言った。

「なつ、俺たち付き合わない?好きなんだ。」


 それは、いきなりの告白だった。
 嘘でしょ!?

 まさかのよっちゃんからの告白にコウも驚いていた。

 よっちゃんは、お調子者で情報通。

 私にとっても、コウちゃんにとっても大切な友達。


 そんなよっちゃんが珍しく真面目な顔をしていた。

 しばらく間をおいて、私は言った。

「よっちゃん、突然どうしたの?うちらってそんな関係じゃないよね?」

 よっちゃん、ごめんなさい。

 私……よっちゃんじゃない。

 よっちゃんは友達。

 友達としては大好きだよ。

 そう伝えた。

 よっちゃんは寂しそうな顔をしていたけど、ニッコリ笑顔で言った。

「 やっぱり、そうだよな!ごめん 」

 あっさりと引いてしまうのもまた、よっちゃんらしいと思った。

 よっちゃんはまだ飲んでいくというので、私は先に帰ることにした。

 雨が降りそうな夜で、湿った空気の匂いがした……。

 辺りは暗くて、私の車いすの音しか聞こえなかった。

 そして心の中では、ごめんねと何度も言った。

 私にとったらそれは、思いがけない出来事だった。
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