桜の木に寄り添う

珈琲と焼きたてパン

次の朝……
 いい香り。香ばしいパンの香りとともに目が覚めた。


「 おはよう 」

 そこはコウちゃんの部屋だった。

 綺麗なシンプルな部屋。
 ホテルみたいに綺麗に片付けられていた。
 女の人より、女らしく思えた。

「 昨日、飲みすぎたー。ここ、懐かしいな 」

 付き合っていたころ、よく泊まっていた。
 懐かしくて、たくさんの思い出のある場所。

 コウちゃんの手作りの焼き立てのパンと挽きたてのコーヒーを頂く。

「 コウちゃんは、いいお嫁さんになれるね 」

「 いいから食べなさいよ 」

 あ、メールだ。よっちゃんからだった。

[ 飲みすぎだよ。帰ったら、連絡しろ ]

「 よっちゃん、心配性だねー 」

「 あいつ、昔から、ナツズキだからな 」

 みんなとっても優しくて頼れる存在だと本当に心からそう思えた。

 考えてみれば、女友達が少ない。

 昔、裏切られてしまった事がある。
 信用できる何人かの人しかいない。

「 コウちゃん、そろそろ帰るね 」

「 送るよ 」

「 大丈夫。散歩しながらゆっくり帰るから 」

「 気をつけてね 」

「 はーい 」


 いつもより明るい朝。清々しい気持ち。

 ゆっくりゆっくり進んでいくと、公園があった。

 鳥の声。涼しい風。春の訪れを感じる。

 よっちゃんに電話をかけた。

「 もしもし、今公園だよ 」

「 だろーね 」

 その時、後ろから声が聞こえた。

 よっちゃんだった。

「 コウちゃんだね 」

 私が出た後、すぐに電話をかけたんだと思う。



 その時、小さいボールが転がってきた。
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