桜の木に寄り添う

緊急連絡

小さい女の子が、こちらを見ている。

 可愛い女の子。小さくて、でもしっかりしてそうな女の子だった。

 よっちゃんは、ボールをとり女の子に渡した。

「 ありがとう 」

 女の子はそう言っていなくなってしまった。

「 かわいいね 」

「 うん。送るよ 」

「 よっちゃん。私、少しの間、お店任せられたの 」

「 おーー、すごいじゃん 」

「 いつかはお店持ちたいからがんばるよ 」

「 なつなら、大丈夫 」

「 よっちゃん、過保護だね 」

 ありがとう……よっちゃん。

 散歩しながら、部屋に戻ると、お母さんの姿がなかった。

  ……その時、家の電話が鳴った。

「 こちら、病院です。お母さんが倒れました。すぐ来てください 」

 一気に血の気が引いた感じがした。

 どうしよう、お母さん!!早く行かなきゃ!!

 ドンッッッ!!

 ドアを開けると、誰かにぶつかってしまった。


 そこにいたのは……ヒロキくんだった……

 ヒロキくんが手紙を持って立っていた。

「 病院に行きたいの。お願い連れてって……」

 私は泣きそうになるのを必死に抑えながらお願いをした。
 ヒロキくんは、車に私を抱えて乗せてくれた。

「 急にごめんね。お母さんが。お母さんが 」

 涙が溢れた。

「 急いで行こう。あんまり心配するな 」

 私の頭を撫でながらそう言ってくれた。

 すぐに病院に着き、病室に向かった。

「 お母さん 」

「 なつー。ごめんね。急にクラクラして 」

「 心配したよ 」

「 過労みたいだよ。大丈夫だから。友達?」

「 ヒロキくんだよ 」

「あの、よく遊んでた?」

「 そうだよ 」

「 どーも。久しぶりです 」

「 なつ、連れてきてくれてありがとう 」

「 着替えとりに帰るね 」

「 お願い 」

 病室を後にし車に乗った。

 ーーー病室にてーーー

「先生、娘には言わないでください。お願いします」

「 わかりました 」


 ーーーーーーーーー


「 ヒロキくん、ありがとう 」

「 後は大丈夫か?」

「 うん 」


 車で去っていくヒロキくんに手を振った。


 私達は、その時は気づいていなかった。

 安西さんが見ていたことに。
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