桜の木に寄り添う

シャボン玉

 私は着替えを何着か用意し、お店にも連絡をしてもう一度病院へ向かった。

 病室に着くと、お母さんは検査中でいなかった。
 荷物を置いて飲み物を買いに行く途中、さっきの小さい女の子に会った。

「 おねーちゃん、誰か具合悪いの?」
 健気な表情で私に聞いてきた。

「 私のお母さんが、入院しちゃったんだー 」

「 そっかー。私のお母さんはお空にいるの。また会えるかもしれないから時々、来てるの。またね、おねーちゃん 」


「あかりー!」

 呼ばれたほうに顔を向けた。
 コウちゃんだった。ジュースを持って立っていた。
 私達は、ベンチに座り話し始めた。

「 なつ。どうして?」

 私達は、中庭へ移動した。
 あかりちゃんは、シャボン玉をし始めた。

「 私のお兄ちゃんの子供なんだ。あかりっていうの」

「 あかりちゃん、お母さん亡くなったの?」

「 うん。もう結構経つけど、会えるかもしれないから連れて行けって 」

「 そっか。なんかわかる気がするなー 」

「 なつのお母さんは平気?」

「 過労って言うけど。薬飲んでたんだ。最近。どこか具合悪いのかもしれない 」

「 そっか。万が一の事があったら・・・一緒に住もう 」

「えっ?」

「 考えたくはないけど。なつ一人になるでしょ 」

「 うん。その時はお願いします 」

「 暗くなったら駄目だよ。お母さん、悲しむよ。笑顔でいないと 」

「 うん。ありがとう 」


「 おねーちゃんも、シャボン玉しよ 」

「 うん!シャボン玉久しぶりにやるよ!」




 シャボン玉が空高くのぼっていく……

 どうか。あかりちゃんのお母さんにも届きますように。
 私は、シャボン玉に思いを込めながらふいた。

 あかりちゃんの笑顔がとても可愛くて、胸が締め付けられる気持ちになってしまった。


 私も何があっても、ずっと笑顔でいようとそう心に決めていた。

 何があっても……。

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