桜の木に寄り添う

久しぶりの声

窓の外の光を見つめていた私は、ふと携帯を取り出した。

 話ししたいな……どうしてるかな。


 突然、声を聞きたくなってしまい電話をかけることにした。
 相手は……ヒロキくん。

 呼び出しの音を聞き、緊張してしまう。
 何回か呼び出してすぐに切ってしまった。

 はぁ……
 私って本当に、どうして素直になれないんだろう。

 自分の気持ちを伝えられないのは昔から変わらない。
 もどかしくてたまらなかった。
 メールしてみようかな。

 大人になった今も、恋をするとみんなこんな風になるのかな。

 伝えたいけど、話したい事もたくさんあるけど、照れくさくて言えない。

 甘えられない自分が嫌だった。

 その時。
 携帯に着信がきた。
 
「もしもし、ヒロキくん?」

「電話きてたから。何かあった?」

 久しぶりの声。
 穏やかな気持ちになるような落ち着く声。

「久しぶりにかけてみただけだよ」

 元気そうで安心した。

 きっと一時間くらい話せたかな?

 私達は、たわいもない、いつもと変わらない世間話をして電話を切った。

 胸がドキドキしているのを隠すので必死だった。

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