桜の木に寄り添う

闇と光

なっちゃん……

 この声……あかりちゃん?
 夢の中で、私を呼んでいた。

 私が気になっているから、あかりちゃんの夢を見たのかな。
 姿は見えず、声だけだった。
 
 こんな夢。今までなかった。
  あかりちゃんのような声だったけど、はっきりとは分からなかった。

「なつ?すごい汗だよ?」

 リエが様子を見に部屋に入ってきた。

「うん。大丈夫だよ。ちょっと夢を見てたみたい」

「だいぶ起きてこないから、見にきたんだよ!」

「え?」

 私、そんなに寝ていたのかな?
 どのくらいの時間が、経ったんだろうか。

 たしかに、夜になったのか、暗くなっていた。

「ごめん、荷物まだ途中だったよね?」

「大丈夫だよ。私達であとはやっておいたから」

「ありがとう」

 私は何やってるんだろう。
 最近の私は、自分の事ばかりで頭がいっぱいになってしまっていた。

 自分の気持ちばかりを優先にして……

 私は、窓を開けて風に当たることにした。

 気持ちの良い風がスーッと入ってくる。

 夜景だ。綺麗だな。
 空はこんなに真っ暗で闇みたい。

 今の私の心の中と一緒だ。

 たくさんの光が輝いてる。
 闇があるからこの光も綺麗に見えるんだよね。

 何事もない日常なんてないんだから。

 私は風に当たりながら、光をじーっと見つめていた。

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