桜の木に寄り添う

知り合い

あれ?どうしたのかな。
 急に足を止めて、リエはある方向をじっと見つめている。

 その方向を見てみると……
 男性と女性が仲良く楽しそうに歩いている。
 小さな子供も一緒に。

「 リエ? 」

「 あ、ごめん。ちょっと知り合いに似てたんだ 」

 ハッと我に返ったように、また進み出した。

 知り合いに似てるって言っていたけど、もしかして別れた彼氏じゃないかなぁ?

 顔は見たことはないけれど、聞いていた雰囲気にとてもよく似ていた気がした。

「 リエ、もしかして今の人って…… 」

「 あ、ばれた??うん、たぶんあの人 」

「 子供いたね 」

「 うん。知ってたんだけど、まともに見ちゃうとなんかね 」

 知ってたんだ。奥さんと子供がいる事。

 きっと私が想像しているより、辛かっただろう。
 少しでも話してくれていたら。

 反対されると思ったのかもしれない。
 頼りにはならなかったかも知れないけど、少しは楽になったかもしれない。

 みんながみんな、まともな恋愛をして生きてるわけではないと思う。

 リエには幸せになって欲しいと思う。
 私の大切な親友だから。

 私は、リエにたくさん助けてもらっているよ。

 私も少しでも力になれるようにならなきゃ。

「 リエ、私ソフトクリーム食べたい!お店の近くにあるから食べてから行こうよ! 」

「 はいはい。なつは、本当にマイペースなんだから 」

 街にはたくさんの人が歩いている。
 そして、時々思うことがある。

 この歩いている人達は、何を考えてどう生きているのだろう……と。

「 なつ、行列できてるよ?いいの? 」

「 うん、食べたいから並ぼう 」

 リエと私は、お店の近くにある行列のできるソフトクリーム屋さんの最後尾に並んだ。
< 84 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop