桜の木に寄り添う

切ない味

私は、ふとリエの顔を見上げた。
 やっぱり、思い詰めた様な顔をしているように見えたんだ。

 リエは、私が見ているのに気づいたのか話しかけてきた。

「 やっぱり、ここは人気だね。全然進まないもん」

「 だいぶ時間かかりそうだね 」

 私達は、何気ない会話を繰り返した。
 今、私が思っている事を言わないで…と言われてるかのように感じた。

「 それにしても、若い子ばかりじゃん 」

「 なかなか並びにくくなってきたよね 」

 少しずつではあるが、レジの方に近づいている。

「 ちょっと、電話しておくね 」

 私はそう言うと、携帯を取り出し上重さんに電話をかけた。

 プルルルル

「 もしもし、お店に着くの少し遅れます 」

 私はそれだけを伝え電話を切った。

 上重さんは、とても明るい声で大丈夫だから、ゆっくり来てね。と言っていた。

 額縁も見つけなきゃいけないけれど、どうしても甘い物が食べたかった。
 並んでいるのを見ると、つい並んでしまう。

「 なつ、もうすぐだよ! 」

 いよいよ、私達の番がまわってくる。

 いつものソフトクリームとは違う、変わったソフトクリームだった。
 まん丸くて可愛い。色とりどりのトッピングがしてある。

「 わぁ、可愛いね 」

 買い終わった私達は、端の方へ行き食べ始める。

 たくさんの人達が、みんな笑顔で食べている。
 私もこんなふうに、たくさんの人達を笑顔にできたらいいな。

 お店の開店もどんどん近づいているからなのか。
 そういう気持ちも芽生え始めていた。

「 あれ、涙が出てくる。なんでだろう 」

 リエはそう言うと、ぽろぽろと涙が溢れ出ている。

「 きっと……美味しいからだよ 」

 私はリエにそう声をかけた。

「 そうだね……美味しすぎるよ 」

 リエは、少し笑いながらそう言う。
 私も、もらい泣きしそうになったけど精一杯の笑顔を見せた。

 甘くてみんなを笑顔に変えてくれるソフトクリームは、少しだけ切ない味にも感じた。
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