桜の木に寄り添う

優しい光

「 なつみちゃん、今日は来てくれてありがとう。リエさんもね。遅くまで引き止めてしまってごめんなさい 」

「 こちらこそ、いつもありがとうございます。素敵なお店になっていて驚きました 」

「 もう少ししたら終わると思うから、そしたらまた伝えるわね。絵の方にもちゃんと伝えてね 」

「 はい、わかりました 」

 そう言い私達は、お店を出た。

 何時間、話していたのだろうか。
 あっという間に夜になり、お店の薄暗い照明がとても綺麗に光っていた。

「 なつ、素敵なお店だよね!良かったね 」

「 上重さんと店長のおかげだよ……私、頑張らないと 」

「 大丈夫!なつなら沢山お客さん来てくれると思うよ 」

 リエの励ましてくれる言葉が、今の私には胸の中に響き、救われている。

 お店の照明をしばらく眺めて、私達は進み出した。

「 今日は、すっかり遅くなっちゃったね!なつ、ラーメン食べて帰ろう! 」

「 うん、いいね! 」

 私達はお互い、何かを吹っ切れたように清々しい顔をしているように見える。

「 そういえば、上重さん。ヒロキの絵を褒めてくれてたね?連絡するんでしょ? 」

「 うん、明日連絡しようと思ってるよ。あの絵、飾らせて貰えるから嬉しいよ 」

 ふと周りを見たら、カップルが沢山歩いてる。
 道沿いのイルミネーションも綺麗に光っている。

 もう冬か……

「 なつ、イルミネーション綺麗じゃない?いつの間にって感じだね!都会って感じ! 」

 私達の住んでいた所では、ここまでのイルミネーションは無かった。

 ここは、東京だったんだよね。
 こんなに人もお店も多い街で、やっていけるのかな。

 あの街とは、やっぱり違う。
 そう……改めて感じさせられた気がした。
 優しい光のはずなのに、綺麗な光のはずなのに、なんだか私にはとても冷たくて強い心のようにも思えた。

 私は、街の人々やイルミネーションをただ……ただ見つめることしか出来なかった。
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