桜の木に寄り添う

突然の雨

お店の看板を眺めながら、考え事をしていた。
 その時……ぽつぽつと雨が降り出す。

「 あ、雨だ。どうしよう 」

「 なつ!」

 私の名前を呼んだのは……よっちゃんだった。
 たまたま通りかかったのだろう。
 私の車椅子を押し、お店の屋根の下へ移動させてくれた。

「 よっちゃん。ありがとう 」

「 ここを通って良かった。大丈夫か? 」

「 うん 」

 私とよっちゃんは、雨宿りをする事にした。
 大粒の冷たい雨が突然降り始めたのだ。

「 結構降ってきちゃったね 」

「 うん。なつ。ヒロキがこっちに来たら、俺向こうに帰るよ 」

「 え? 」

「 いつまでも此処にいても仕方ないだろ 」

 よっちゃんに言われた一言が何故だか胸に突き刺さる。
 よっちゃん……

「 いつもありがとうね!助かってます 」

 よっちゃんは、柔らかい表情で私を見ていた。

 そう言われて、私は少し寂しかった。
 優しくしてくれるよっちゃんに、甘えていたのだろう。

 私の事を好きって言ってくれたよっちゃん。

 私は自立していかなければならない事を気づかせてくれた存在。
 気持ちに答える事はできない、できれば近くにいて欲しいと思ってはいたけど、言葉にすることは出来なかった。

「 よっちゃんがまた向こうに戻ったら、また遊びに行くね! 」

「 おう!その時はまたお酒でも飲もうな!頑張れよ! 」

 何も無かったように、いつものように振舞ってくれる。
 それだけで、私はありがたかった。

 雨は、私達が話を出来るように降ってくれたのだろうか。
 よっちゃんの、頑張れよ!と力強い言い方に背中を押されてるようにも思えた。

 あの事から私の中で、よっちゃんと普通に会話が出来ていたのだろうか。
 きっと前みたいな会話ができず、どこかぎこちなかったのではないだろうか。

 そんな中の突然の雨は、私達をまた友達に戻してくれたんだ。

 会話をする時間をくれたのではないのだろうか。
 良かった。普通に話せてる。

 突然の雨が私は、すごくありがたかった。

 だって昔の私達に戻してくれたのだから……

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