身ごもり政略結婚

そして私にも笑いかけて、ただいまのハグと軽いキス。

毎日繰り返される行為だが、何度経験しても照れてしまい、どうしてもうつむき加減になる。


「体調は?」
「大丈夫です」


すっかりつわりもなくなり、検診でも異常はない。


「これ、買ってきたんだけど」
「紅茶ですか?」


彼がバッグの中から取り出したのは、ラズベリーリーフティ。


「うん。これ、妊婦にいいんだってさ。陣痛が和らいだり出産の時間が短縮したりする作用があるそうだ。あと産後も、母乳を促したり子宮の回復を促したりするらしいぞ」

「へー、知りませんでした」

「でも、子宮を刺激するから八カ月以降くらいに飲むのがいいんだって。もう少ししたら試してみよう」
「はい」


大雅さんは私から妊娠出産に関する書籍を取り上げたくせして、自分はいろいろな情報を収集している。

そのせいか、私より『陣痛大丈夫かな』なんて心配しているくらいで、それを和らげると知って買ってきてくれたのだろう。
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