身ごもり政略結婚

「さっき、結衣が眠っている間に、お父さんが来てくれたぞ。愛結と初対面して、抱いてあげてくださいって言ったのに、絶対に無理って言い張って」

「お父さんが?」


きっと私が産まれたときは抱いただろうに。


「うん。結衣の心配をしてた。けど、男親がいてもなにもできないからってすぐに帰られて……これ」


彼が差し出したのは、ふたつの箱。

そのうちのひとつは見事なはさみ菊が入っていて、愛結の誕生を祝ってもらえているようだった。
そして、もうひとつの箱には……。


「嘘」


男雛と女雛の練り切り。

出産前にイラストを描いてメールで送ったら【こんなものは作らん】とひと言返ってきたのに。

女の子だと知って、作ってくれたんだろうな。
もうすぐ桃の節句だし。


「これ、すごくいい。アルカンシエルにも提案しよう」
「あはは。さすが敏腕専務」


父の能力がもっと知られていくといいな。
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