身ごもり政略結婚
ショーケースにずらりと並ぶ、食べるのがもったいないほど見事に成形された和菓子は〝練り切り〟といわれるもの。
白のこし餡に砂糖や求肥などを加え、練り上げて作る生菓子のことだ。
この生地で餡を包み、食紅などで着色して柿や紅葉といった季節のものを表現する。
千歳で販売している繊細な形の練り切りを作るには技術が必要だが、父は難なくいくつも作っていく。
父の職人としての腕は一流で、有名な政治家も千歳の和菓子を手土産に利用することもあり、私はそんな父のことを誇りに思っている。
ただ、宣伝など一切しないので、なかなかそのよさは広がらない。
毎年このくらいの時期に定番となっているのは、〝紅葉(もみじ)〟という名前の商品。
これは橙色や黄色をグラデーションに混ぜた練り切りで餡を包み、本物の楓の葉そっくりに再現したものだ。