身ごもり政略結婚
もちろん、千歳もだ。
エール・ダンジュに資金提供してもらい、店は続けられているけれど、ずっと赤字を出し続けていいわけがない。
ただ、父は芸術品と賞賛される和菓子は作れても、営業力も伝手もない。
大雅さんだけが頼みの綱。
大雅さんの発言がありがたいのに、それと同時に不安にもなる。
それは、体調がすぐれず、新たな和菓子を考えられていないからだ。
伝統的な和菓子は父がどれだけでも作る。
でもアルカンシエルは常に新しいものを追い求めていて、リピーターのお客さまが飽きないようにバリエーションが保てるかどうかも重視していると聞いている。
それなら新たなデザインも考えなくては。
「そろそろ迎えが来るから出るけど、ゆっくり寝てろ」
大雅さんはそう言いながらイスにかけてあったネクタイを手にして結び始めた。
『primo passo(プリモパッソ)』という知る人ぞ知る高級紳士服店でオーダーしているというスーツを完璧に着こなす彼は、できる男のオーラが漂う。