身ごもり政略結婚
私は毎朝、このスーツ姿を見て胸をときめかせている。
旦那さまなのに……彼との赤ちゃんまでお腹にいるのに、初めて彼に恋をしたみたいに。
「はい。ありがとうございます」
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
大雅さんは私を心配しながら、慌ただしく出ていった。
彼が出ていった玄関のドアを見つめながら呆然と立ち尽くして考える。
「役に、立たなくちゃ……」
最初から跡継ぎが欲しいがための結婚だった。
ということは、この子が産まれてきたら私はお役ご免?
さすがに追い出されるようなことはないだろうけど、用済みになってしまうようで怖い。
まだ多くを知らないとはいえ、大雅さんとの生活は嫌じゃない。
結婚当初は、政略結婚なのだからもっとよそよそしく冷めた関係になるかもしれないと身構えていた。
家庭内別居、のような。
けれど、最近は特にそうでもない。
時々越えられない壁を感じることはあれど、大雅さんは多くは語らなくても優しさを見せる。