緑の風と小さな光 第2部
「いや、いい。今回は抜き打ちだ。」

「?…はい。」

…一体、陛下は何を考えておいでなのだ…?

タリヤは不思議に思ったが、何も言わずに従った。



当日も、いつもとは違った。

離宮には大抵『お忍び』で行くから、従者は2〜3名だ。しかし、今回はそれすらいない。

ヤールとタリヤだけだった。

魔法のかかった馬は飛ぶような速さで森を駆け抜け、1時間足らずで離宮に着いた。

門をくぐり、馬から降りて裏庭のセレの墓まで足早に歩く。

…ただの墓参りではない…

タリヤは、何故か不安を感じた。

墓の前で足を止めてヤールは言った。

「タリヤ。墓から棺を出す。中を確かめるぞ。」

タリヤは驚いた。

「!…セレ様の墓を暴くというのですか?!」

「そうだ。」

「…いくら何でも…それは…」


「この墓の下の遺体が本当に兄様かどうかを確かめたい。…あの夜、お前も見ただろう?

いくらヴァシュロークの魔法とは言え、あそこまで完璧に生身の肉体を再現できるだろうか?

…どうしても生きているとしか思えないのだ。」


「…確かに、動きは生きている人間そのものでしたが…」
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