緑の風と小さな光 第2部
「だろう?…では早速始めよう。まずは棺を出してくれ。」

「……」 

タリヤは困った表情のまま動かなかった。

「どうした?」

「…もし本当にセレ様のご遺体だったらと思うと…畏れ多くて…」

王家であるランディール家への忠誠心が厚いタリヤにとって、セレの墓を暴くなど、考えるだけで背筋に冷たいものが走るのだ。

あの夜、国王の護衛として、知らぬ事とは言えセレに傷を負わせた。…それだけでも心苦しいというのに…

「『やれ』と言っているのは私だ。お前に責任は無い。棺を地表に出してくれるだけでいい。後は私がやろう。」

「…はい。」

タリヤは浮かぬ顔のまま、大地の魔法で棺を地中から引き上げた。

「それでいい。」

ヤールは自分の手で棺の蓋を外した。

「……」

タリヤは一瞬、目を逸らした。

棺の中には王太子の衣装を纏った白骨が横たわっていた。

「復元してみよう。」

外見の復元だけなら、蘇生とは違い簡単にできる。ヤールは呪文を唱えた。

微小な物質がどんどん白骨に吸着し、元の顔と身体を形作ってゆく。

…兄様か?…それとも…

数分後。

「やはりな。」

棺の中に現れた顔はセレではなかった。
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