ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

送っていくという部長の申し出を丁重にお断りして。
そこそこ混みあった山手線に乗り込んだ。


ガタンゴトン……ガタンゴトン……



ドア際に立ち、移っていく夕暮れの景色を眺めながら。

ここ数時間に起こったことを思い浮かべて、整理しようとするんだけど。


脳が、考えることを放棄してしまったみたい。


思考も感覚も、麻痺していて。
すべてがぼんやりと、曖昧で。


泣きはらした顔を隠すように、冷たいガラスに額を押し付けた――



「あら、あなたっ! 赤ちゃんがいるんじゃあないのっ! 駄目よ、そんなところで立ってちゃ!」

「……え」

のろのろと振り返ると、1人の中年女性が優先席から勢いよく立ち上がるところだった。
「ごめんなさいね、気づかなくて。さぁさぁ、座って座って!」

そんなに何駅もないし、別に立ってても……と思ったけど。
女性の大声で余計な注目を浴びてしまい、居たたまれなくて、そそくさと腰を下ろした。

「すみません、ありがとうございます」

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