ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
19. 大団円

――まぁっなんて美しいお姿でしょう。優雅というか気品があるというか、まるで王族のようですねえ。


検診終了後、ロビーの待合室で会計の順番を待っている時だった。
流れてきたワイドショーの音声。

顔をそちらへ向けると、大型テレビにライアンが映っていた。
CEO就任の挨拶を兼ねて、ヨーロッパを訪問中らしい。
ドレスアップしたセレブたちと肩を並べて、レッドカーペット上を颯爽と歩く姿は、堂々として凛々しくて。別世界の人みたい。

後ろを歩いてる褐色の肌の美人は、誰だろう。
女性らしい曲線美が際立つ、パッと目を引く人。
この前見たニュースでも、一緒だったような気がする。
会社の人、かな……秘書とか?

嫌だな。
私、嫉妬してる。

うんざりしながら窓の外を見れば。
桜の木々もいつの間にか、その緑をぐっと濃くしていて。
太陽も圧力を増していて……
室内にいてさえ、巡る季節を感じることができる。

7月ももう終わりだ。
なのにライアンは……まだ、帰ってこない。

ちょうど彼がシンガポールに着いた頃、リー総帥が倒れたそうで。
混乱する社内を収拾するために、総帥代理を務めることになったってことは聞いたけど。

それ以降は、何の連絡もない。
忙しいんだってことは、理解してるけど……

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