ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

はぁ、と吐息をついて、パイプ椅子の薄い背もたれに体重を乗せた。
ギシっと椅子が悲鳴をあげるけど、構わずそのまま天井を仰ぐ。

室内にいるのは、私だけ。
スポットライトがぽつぽつと寂し気に、壁沿いにずらりと並んだ棚を照らしてる。

坂田とのランチの後、直行したのはここ、会社の資料庫だ。
過去うちが関わったすべての広告がファイリングされている上、閲覧パソコンで他社の広告、新聞も過去数十年に渡って検索できる、ライブラリー機能を備えた場所。

最近、時間ができるとここにこもって、リーズグループのことを調べてる。

ニセ秘書の正体がはっきりしたら、彼との関係も元に戻るんじゃないかって……勝手な思い込みっていうか、ほとんど願掛けに近いかもしれない。


「よし、やるか」
よいしょ、と身体を起こし、私は閲覧パソコンに向かった。


ニセ秘書の言葉を信じるなら、リー総帥はライアンに跡を継がせたがってる。
そして、私たちの仲が裂かれようとしてることから考えても、日本にいる誰かが総帥の意向を通すべく、動いてるってことになる。

逆に言えば、ライアンの対抗馬っていうか、自分こそが後継者にと考える野心的な人物は、黒幕候補から除外してもいいんじゃないかな。

例えば……リーズホテルズジャパンの李偉平(リー・ウェイピン)社長。

ポン、とエンターキーを押して、シェルリーズホテル関連の広告や記事を読み込む。

畑中氏同様、リーズコーポレーションの取締役を兼務してる彼は、リー総帥の弟の息子、つまり甥にあたる。
総帥との距離でいうなら、彼が一番近いことになるけど……ちょっと近すぎる気がする。
自分を差し置いてライアンが後継者になる、そんなこと支持するだろうか?
しかも、去年起きたシェルリーズホテルの事件のせいで、上層部を刷新したばかり。きっとバタついてるだろうし。

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