ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

まだ約束の時間まで少しあるから、とロビーの片隅に誘われた私は、「大丈夫ですか? 飛鳥さん」と憂いを帯びた眼差しに見つめられた。

「はい、私は大丈夫ですよ。赤ちゃんも元気ですし」

最近いろんな人に心配されっぱなしだな。
苦笑しながら考えて――

「あいつ、どうしてます?」

……はい?
あいつ、どうしてます??

それは思いがけない問いで、大いに戸惑う。

あいつって、ライアンのことよね?
彼の上司にあたる拓巳さんが、どうしてそんなことを私に聞くんだろう?

「え……と、会社で、会ってないんですか? 私は、今回の騒動でホテル住まいをしてて、彼とは全然連絡をとってないんですけど……」

首を傾げる私を見下ろして、拓巳さんが小さく舌打ちした。

「……にやってんだよ、あのバカ」
ぼそっと吐かれた言葉に「え?」って視線を向けると、整った顔が気まずそうに逸らされた。


「飛鳥さん、あの……実はあいつ、今会社に来てないんですよ」


「え――……ええっ!?」
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