幼馴染は恋をする
「あ、あのさ…知ってるよな?」

「何を」

今度は何だ。

「お前……中途半端なんだよ」

「何が」

「いつも家まで一緒に帰ってんじゃないのかよ」

「あ、また朝の事か」

「どうなんだよ」

「まあ、だいたい、ほぼ、帰ってる」

「それ、家までか」

「あ、さっきから何だよ」

「知らないんだな。…あんま、言いたくない…けど、俺の母ちゃんが聞いたって。うちの母ちゃん、パートでレジしてるから。色々、話、耳に入るんだよ」

「ん?」

「恐い目に遭ったってさ、朝ちゃん」

「はあ?いつどこで」

思わず誠人の胸ぐらを掴んでいた。

「あ、馬鹿、俺は関係ない、落ち着けって」

「あ、うん、…悪い」

「……ふぅ。噂だぞ。家の近くでらしいんだけど、丁度人気がなかったんだろうな、一瞬、路地裏に連れてかれたって、そんな感じの話で…」

「はあ?おい!」

もう一回誠人の胸くらを掴んだ。

「待て待て、落ち着けって。セーフだ、セーフ。だいたい、そんな、住宅街の近く、人が通らない訳がない、だから、直ぐ気づいてくれた人が居て、事なきを得たってさ。そんな話なんだ。詳しいことは知らない、本当かどうかも定かじゃないそんな話だ。どこまでが正確な話かは解らん。母ちゃん達の聞く話は興味本意なだけで、尾ひれも付くし、信憑性に欠けてるから…」

「…なんだよ、…それ」

じゃあどうなんだ。

「…でも、知らなかっただろ」

「…ん」

朝が自分から話したい話じゃない。だからと言って、…こっちから聞いたら、そんなに広まってるのかって、朝が気にする。
大丈夫だったのかって、一人が聞けば、それは一体何人になるんだ。それって、本人が一番嫌だろ。

「大丈夫だったんだよな」

「母ちゃんが聞いた話だと大丈夫だったらしい」

「…そうか」

朝は……こういうの、初めてじゃない。こんな目に、状況は違っても何度か遭ってきた。
その度、どれだけ恐い思いをしてたか…。
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