幼馴染は恋をする

「そうか、そうなのか。いいじゃないか同級生で、仲も良いことだし」

「あ、いや…ち」

ば、あ?どうしたらいいんだ?そうしておくのがいいのか?

「お父さん、遅くなる。明日も学校あるし、もう送って行こうよ」

「あ、うん、そうだな。よし、じゃあ車を出すよ」

お父さんが鍵を持って出た。話を朝がぶった切った感じになった。

「…朝」

「黙ってて、お願い…」

「…うん、…このままがいいんだな」

「うん、ごめん」

「解った」

「な~に?ゴニョゴニョ話して~」

里英…割り込んできた。

「何でもない、行こう貴浩君」

「あ、朝…。待て、鞄」

なんだか知らないが朝が手を引いた。

「あ、ごめん」

「お~い、もう出られるぞ?」

お父さんが玄関から呼んだ。

「は~い、今行く~」


お母さんと里英も一緒に出て来た。

「ご馳走さまでした」

「また来てね。うちはいつでもいいから。お父さん、もう会ったから大丈夫よ?」

あ、いや何が大丈夫なのか、ニコニコされても……どうするかな…。

「別に来なくてもいいのよ、挨拶挨拶、決まり文句よ」

…里英…でも助かった。

「おやすみなさい」

「おやすみ」

車に乗って更に見送られた。


家を離れたら車でならそんなに長い距離ではない。

「貴浩君、朝の事、頼むよ?」

「あー、はい…」

これ、どういう事になるんだ?

「今まで通りでいいからね」

「あ、はい」

勿論、そうだ。

「難しい年齢だからね。根掘り葉掘りなんて聞いたら無視されそうだ」

「そんなことは…」

これは朝に言ってる気がした。

「こっちでいいかね?」

「はい、もう……そこです」

やっぱり車だとあっという間だ、良かった、大して長い時間にならなかった。
朝、一言も喋らないんだけど。
帰り、お父さんと二人になる。なんか話すつもりなんだろうか。

母さんと佳乃が立っていた。父さんはまだ帰ってる時間じゃない。
車が家の前に停まった。降りると早速挨拶が始まった。

「今日は有り難うございました、出ましたからって連絡を頂きました。送ってまで頂いて」

「いいえ、息子さんの事は話には聞いていましたし、なんだか知らない仲ではないような感じでずっと居て、今日こうして会えて良かったです。娘の事を送って頂いていて、有り難うございます」

「いいえ、電話でもお話ししましたが、年頃の娘を持つ同じ親としては、貴浩は男の子ですので、一緒に帰ることで少しでも抑止になれば幸いです。昔と違って妙に物騒になりましたしね」

「そうですね。あ、どら焼き、美味しかったです」

「あぁ、あれは奥様もお好きじゃないかと思いまして、息子にそれを言付けておきました」

「次からはお気遣いされませんように」

「まあ、そういう訳には…」

「…母さん」「…お父さんそろそろ」

「あ、なんだか長くなってしまって、有り難うございました」

「ええ、では、また」

「はい、有り難うございました、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

俺は朝にじゃあなと言った。朝は手を振り返した。
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