幼馴染は恋をする
「おかえり、どうだった?あちらのおうちは」

「あ、うん。疲れた」

「気疲れ?初めての対面だもんね」

対面て…対面だけど。なんか違うんだよな。

「姉貴は会ったことあるんだろ?」

「うん、前からお母さんにはね」

「貴浩、お風呂入っちゃいなさい」

「あー、うん」

「どうしたの?何かあった?」

あったといえば、あった。

「…特には」

「な~に?何か失敗したの?」

「特には」

「じゃあ何?」

「何でもない」

「いい、里英に聞けば解るから」

あ、そうか。言っといた方がいのか。このままだとどうなるか…。

「年頃だからって、好きな人の話になったんだ。俺は別にいないって言ったんだけど。朝が…」

「朝ちゃんがどうしたの?」

変な溜めはない方が良かったのに、これで自分の名前を言うのも…。

「貴浩?」

「朝、俺のことが好きだって言っちゃったんだ」

はぁ、ハズイ。しかもこれ違うし。なんて説明したらいいんだ。うちの親に俺がばらすなんて事できないし。

「でもこれは」

「いいんじゃないの?」

え?

「母さん…」

「中学生らしいつきあい方をすれば」

「ち、母さん違うんだ、これには」

あ、……言えない。

「あ、まあつき合いは今まで通り変わらないよ」

「そうね、そんな感じで、自然でいいと思うわよ?」

……なんの解決にもならない。

「貴浩、ちょっと来て」

あ、なんだよ。姉貴の部屋に入れられた。

「あんた、なんか隠してるでしょ」

まあ、解るよな、歯切れ悪いし。だけど、…姉貴に言ってもいいのか?…。

「隠してるっていうか」

ん゙ー。

「あいつ、好きなのは俺じゃないんだ」

…言っちゃったな。

「誰にも言うな、朝の姉ちゃんにも言うな。俺は誤魔化しに使われただけだから」

「はぁあ?…なにそれ…」
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