幼馴染は恋をする

柳内さんのあの電話以来、俺は朝に会っていない。朝から連絡もない。
短い春休みは終わった。


高校で俺と誠人は同じクラスにならなかった。誠人は永遠の別れのように嘆いていた。
でもそれは一年の時だけで、二年からはまた同じクラスになった。三年でもだ。やっぱ復活愛だとか言ってたな。そして、卒業だ。高校生活、過ぎてみればあっという間のことだった。
その間、朝の噂は聞いた。

朝は益々目立つほど綺麗になったらしかった。
相変わらず姉貴同士は仲がいいからさりげなく情報をぶちこんできた。どうやら朝は大学には行かないらしいということも。
そして家を出て一人で暮らすということも。就職して自立がしたいのだと。
中学の時に言ってた通り、朝ならそうするだろうと思った。初志貫徹とでもいうのか、勢いで言ったはずだった言葉は実行された訳だ。

朝のことなら何でも知ってると思っていた。でもそれは間違っていた。俺は朝があの家の子じゃないことを知らなかった。そりゃそうだ。
簡単に言える話じゃない。大切に育てられれば育てられるほど、我を通すことは苦しかったんじゃないかと思った。
朝が妙に大人で冷めていたのは小さい頃から割りきりが身についてしまったんだろう。
初めて会った時の朝は表情が乏しかった。それは、お互いに同性だと思っていて違ったっていうのもあったんだけど。それだけじゃなかった。子供らしくない顔つきをしてたんだよな。
本当のお母さんは亡くなった。だから引き取られた。そういうことから朝の人生は……小さい頃は変な男に連れ去られそうになったり、色々と…何度かあったんだ。知らなかった。話して広めることではない。
中学になってからちょくちょくあったことは知っていたけど。


朝はどうしてるんだろう。ていうか、……そう思ってるんなら連絡してみればいいだけなんだけど。柳内さんとのやりとりが全てのような気がして。俺の気持ちも朝に透けてるんじゃないかって。その上でこの現状だ…。

「ちょっと、貴浩」

わ、…びっくりした…。

「…はぁぁ…脅かすなよ死ぬだろ、いきなり入ってくるな。プライバシーの侵害だ」

「死なないわよ。あんた、あれをひた隠しにしてたのね」

「は?なんだよ、いきなりあれって。意味不明なんだけど」

「あれはあれよ」

…あれあれ言われても。

なんだ、この探り合い。

「そんなにあれ以外のあれってあるの?」

知るかよ。なんの話か解らない…。

「ふぅ…駄目か。白状すると思ったんだけどな」

何を吐かせたいんだ。

「はあ?カマかけたのか?」

あれってなんのことだ…。
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