ストーリー
☆☆☆

明日香を保健室まで送り届けると、あたしはすぐに帰る準備を始めた。


本当はもう少し作品を進めたかったけれど、仕方がない。


鞄を手に部室を出た時、ちょうど米田健太郎(ヨネダ ケンタロウ)がこちらへ歩いてくるのが見えた。


健太郎は文芸部の生徒じゃないが、同じ2年1組のクラスメートで、あたしの彼氏だった。


「愛奈。今日はもう帰るのか?」


「ううん。ちょっと駅に行こうと思うの」


「駅に?」


首をかしげてそう聞いてくる健太郎に、明日香から聞いた話を説明した。


聞きながら健太郎は険しい表情になっていく。


「轢かれたって、それ本当かよ」


「たぶん……。でもわからないから、駅まで行ってみようと思って」


今さら駅に行ってもなにもわからないかもしれない。


でも、行ってみないと自分の気が済まなかった。
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