“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
「みんな、こっちよ」

走り出したアリアンヌお嬢様のあとを、イリスとドリスも追うように駆けて行く。

「アリアンヌお嬢様、走ったら、危ないですよお!」

メアリーさんの注意の声は届いていないのだろう。護衛のミシェル様も、走って追いかける。

迷路のような庭園なので、すぐに姿を見失ってしまった。

「アリアンヌお嬢様ったら!」

「薔薇のお花を、みなさんに見せたくてたまらないのでしょう」

「そんなに急がなくても、薔薇は逃げやしないのに」

「そうですけれど」

メアリーさんのぼやきに相槌(あいづち)を打った瞬間、アリアンヌお嬢様の絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

「え?」

「アリアンヌお嬢様!?」

メアリーさんと共に、あとを追いかける。くねくねと入り組んだ道を進み、開けた先にアリアンヌお嬢様の薔薇が植えてあるはずだった。

「こ、これは!」

「そんな!」

そこには、膝から頽(くずお)れたアリアンヌお嬢様と、肩を支えるイリスとドリス、呆然と立ち尽くすミシェル様の姿。それから──根こそぎ刈り取られた『アリアンヌ』の薔薇の苗が散乱していた。

それだけではない。刈り取った薔薇は、焚火の中で燃やされていた。

美しいはずだった薔薇の庭園は、無惨にも破壊されていたのだ。
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