“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
◇◇◇

夕方から、アリアンヌお嬢様と離れの庭に向かう。本邸ほどではないが、離れにも美しい庭があるのだ。なんでも、病気だったアリアンヌお嬢様の母君の心を和ますために造られた所らしい。

「ああ、アリアンヌお嬢様、本日も麗しく」

そう言って深々と頭を下げたのは、庭師のロジーさんだ。今日も相変わらず、紳士である。

「今日は何用で?」

「薔薇の花を摘みにきたの」

「でしたら、今日咲いたばかりの薔薇がございます」

ロジーさんの案内で、薔薇園に向かった。

「こちら、ブリランテという大輪品種でして」

「まあ、素敵! レティーシアのイメージぴったりだわ! 名前も、輝かしい(ブリランテ)なんて、あの子のためにあるような薔薇だわ」

「本当に」

赤ではなく、深紅と表現したほうが相応しいゴージャスな薔薇だ。レティーシア様そのものを薔薇にしたように見える。

「プリザーブドフラワーは、一度色を抜くのよね?」

「ええ。なるべく、この深紅を再現できるように、色づくりに努めますが、同じようにはできないですね」

「そうよね。だったら、形がきれいなものを選ぶわ」

アリアンヌお嬢様は真剣な眼差しで薔薇を見つめている。一日勉強して、ダンスを習って疲れているだろうに、レティーシア様を喜ばせようと頑張っているのだ。
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