愛のかたち
5.知香ちゃん
『咲貴、わたし妊娠したみたい。』

クーラーのきいた涼しい部屋に入って第一声、知香ちゃんが言った。



『へ??』

わたしは口を開けたまま立って聞いていたので理沙ちゃんがまず座れと言った。


わたしは驚いてそれ以上の声がそのとき出ず、とりあえず座ることしか出来なかった。



『今3ヶ月だってさ。』

理沙ちゃんが続いて言った。


『あの・・・、あの彼氏の子どもなんだよね?』

わたしが聞くと知香ちゃんはコクンと頷いた。


周りを見るとたまごクラブとかかれた雑誌があった。

知香ちゃんは産む気なんだろうとそのときに思った。



『あの彼氏ね、今日知香ちゃんと連絡が取れないってうちの店来たよ・・・。』

今日の出来事を話した。

知香ちゃんは驚いて何って言ったの!?

と聞いてきたが、言われたことだけ言った。


たいした話はしていないのでちゃんと色々と話をすればよかったと後悔した。



『知香ちゃん、産むの?どうするの?なんで彼氏に連絡しないの?』

わたしが聞くと知香ちゃんは困惑していた。

『奥さん、浮気は絶対ダメな人らしいよ。まだバレてなくてバレたら危ないみたい。だからまだ話せずじまいなんだってさ。』

理沙ちゃんが変わりに言った。

そのときあの男の薬指の指輪がすごく光っていたことを思い出して、きっとその奥さんが目立つように磨いているのだろうとわたしは思った。

奥さんがダメな人なら最初から浮気するなよ・・あのくそ男。

子どもが出来たのに奥さん気にしてる場合じゃないのに。

どうしてそんなにあの男を守るんだろう・・・。




『知香ちゃん、あの人に話さなきゃだめだよ。父親なんだから。』

わたしが言うと知香ちゃんは俯いていた。

『知香ちゃん、わたしも思うよ?』

理沙ちゃんも続いて言った。

でも知香ちゃんはまだ俯いたままだった。
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