愛のかたち
暫くした後、知香ちゃんは蚊くらいの消えそうな声で言葉を発した。


『━━たいよ。言いたいよ?会いたいよ?本当に好きだもん。でも、彼はこれからどん底になっちゃうんだよ。それは━━・・避けたい。だから何も言わず、わたしは1人で育てたい。』


泣きながら言う知香ちゃんにわたしたちは猛反対した。


『バカ!!!どん底にさせてやればいいじゃない!!ねぇ、咲貴!!』

『そうだよ!!これは2人の問題なのに知香ちゃん1人が抱えることない!!知香ちゃんが言わないならわたしらが言うもん!!』

そう言うと知香ちゃんは大声で

『やめて!!』

と言った。

わたしたちはそれで黙った。



『お願い、まだ言わないで。時期が来てから・・・ちゃんと話すから。』

さっきの小声とは反対の大きな声で知香ちゃんは言った。


いつも恐く、元気な姿ばっかりだった知香ちゃんが、今のこの弱々しい姿。

この状況で更にあの男が更に許せなくなった。



こんなに知香ちゃんをボロボロにするなんて・・・。


怒りがこみ上げてきたが、止められた以上、何も出来ない。

理沙ちゃんもこの知香ちゃんの姿を見て涙を流していた。


『わかった。言わないけど、ちゃんと彼氏には話さなきゃだめだよ。この子のことは知香ちゃんだけじゃどうにもならないと思うから。お金のこととか、無理でしょ??向こうだって黙っとかれていい気持ちはしないと思うから。話さなきゃ絶対だめ。』

わたしは妙に落ち着いて言った。

この姉2人のボロボロな状態を見ていたらわたしがしっかりしなきゃ。と思ってしまったから。
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