愛のかたち
返事はそれから返って来ることはなかった。

きっとわかってくれたんだろう。



放課後、友美とケーキを食べてお土産を買って孝浩くんの家に向かった。

大学生はまだ夏休み中で、孝浩くんは今日、7時までのバイトだったからちょうど帰ってきている時間だった。

家に行くと電気がついていたので、わたしは迷わず部屋の前へ行きインターホンを押した。


何も言わずに来たからビックリするかな??



そう思っていると玄関があいた。

『おぉ、どうしたの??』

孝浩くんがビックリしたように言ったのでケーキを顔くらいの位置にあげて

『お土産だよ。』

と笑いながら言った。



孝浩くんはありがと、と言って部屋に入れてくれた。

相変わらず孝浩くんの香水の香りと、今吸っていたのだろう。

タバコの香りがしていた。


孝浩くんはわたしにコーヒーを入れてくれて一緒に食べようと言ってくれた。

でもわたしはさっき友美と食べたので、孝浩くんの分しか買ってないということを告げるとおいしそうに食べてくれた。


『今日、俺バイトで聞いたけど沢村さん辞めるらしいよ。引っ越すって。あと吉岡さんも。吉岡さんは就職決まってインターンシップしなきゃいけないらしい。』



吉岡さんとはわたしの4つ上の専門学生の男の人。

話は仕事以外ではほとんどしたことのないおとなしい人だった。

インターンシップとは学生のうちから就職先に働きに出ること。



『昨日やっと和解したのに沢村さん辞めるのかぁ。せっかく話せるようになったのに。』

わたしが淋しそうに言うと孝浩くんはわたしをギュッと抱きしめてくれた。

『いいじゃん。咲貴には俺いるし。』

そう言ってキスをした。
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