愛のかたち


『新垣さん?覚えが悪いわね。メニューくらい1度みたら覚えれるでしょ?あんたみたいなのを入れたオーナーの気がしれないわ。』


こんな言葉を吐いているのは多分お局様だろう。

年齢は聞いていない。

名前を言った瞬間、挨拶もさせてくれずメニューをズイッとわたしの前に差し出して

『全部覚えといて。』


と言ったこの女は佐々木から聞くところによると村松さん、20歳。

沢村さんより1つ年上だけあって厳しさもまだ上な感じがした。


外見は長い黒髪をピタッと耳下でくびってつり目をした普通体型。

どうみても20歳には見えねーけど・・ってくらいフケている。

ってより外見から厳しそうって雰囲気が漂っていた。


『すみませーん。』

低い声で言うとギロッと村松さんに睨まれた。

こえー・・・。


『村松くん、新垣さんは初日なんだから無理だよ。だいたい君は指導係じゃないだろう。』


そんな村松さんに上から目線で言うこの人はこのお店の正社員、大塚さん。

すごく太っていていかにも食べそうという感じだ。

年齢は28歳で、大塚さんがわたしの指導係。


わたしはこの日、白いシャツ、黒いネクタイ、黒いパンツ、黒のエプロンでホールデビューをした。

といってもお料理を運ぶだけだけど。


お客さんはほとんど紳士な方ばっかりでどこか気品を感じた。


いいな、わたしもいつか来たい。

ホールにというかお店に初めて入ったときの感想はこうだった。



今日は大塚さんが村松さんから遠ざけてくれたお陰でそこまで虐められることはなかった。

これからはありそうだけど頑張ろうっと。

佐々木にそう言うと辞めないでよ。と何度も言われた。


確かに忙しかったが、こういう仕事が初めてだったので楽しさも感じた。
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