愛のかたち
俊くんの部屋を出ると隣の部屋からは大きな笑い声が聞こえる。

お姉さんの部屋なんだろう。


誰もいない廊下を、静かな階段を降りてわたしたちは尾上家を出た。


そして家まで俊くんはバイクで送ってくれた。

いつもはない車が車庫にはあった。

きっとお兄さんのなんだろうと思いながらわたしは俊くんの背中にしがみついていた。


冬の匂いがツンと鼻につく。



『今日はごめんね。』


わたしの家に到着するとそう言ってわたしの髪をさわった。

俊くんはわたしの髪をさわるのが好きらしい。


『ううん。全然。お姉さん、明るくて綺麗な人だね。』


その瞬間、また俊くんの顔が強張った。


『あいつの━━・・・話はやめて。』


そう言ってまたメットをかぶりバイクに乗ろうとした。


『待って、ごめん。もうしないよ。』


慌ててわたしは服を軽く掴んで俊くんを止めながら言った。


でも振り向いた俊くんはすごく笑顔で


『いや、俺こそごめん。じゃあまた明日。』


そう言ってバイクで走り去った。


なんで━━あんなにお姉さんを嫌うんだろう??

なんで━━あんなに強張った顔をするんだろう??


優しそうで、挨拶をしに来てくれたのに追い出すのはなんでだろう??


そして、なんで家族の話をそんなに嫌がるんだろう???
< 241 / 386 >

この作品をシェア

pagetop