愛のかたち
あの、胸が押し潰れるように辛かった別れの後、わたしは地獄に堕ちたような感じだった。

そんなわたしの手を引いてくれたのは、この人、孝浩くん。

わたしはまだ俊のことが好きってわかってるのにそばにいる。


あの後、俊の行方はわからなくなった。

俊くんの家に行き、家族の帰りを待った。


夜中に帰ってきたお姉さん(義理だろうけど)に聞いたら


『そういえば、最近見ないかも。』


関心のない一言だった。

そのときに初めて表札を見たけど本当に【中本】と書いてあった。

意外と気付かないものなんだよね。


高校にも行ってなかったらしい。

合格した専門学校にも行ってないらしい。


バイトは辞めた。


村松さんがあることないことオーナーに言いふらしたから。

カプリの株を下げる店員だって言ったらしい。


オーナーは信じてなかったけど村松さんがあまりにもひどく、わたしの服とかも切り刻んだりした。

耐え切れずわたしはオーナーに話した。

村松さんを辞めさせるとオーナーは言ったけどわたしは俊と少しでも思い出のあるこの店を立ち去ることにした。

俊がいないから無意味なの。


村松さんにいじめられた理由?

決まってる。

孝浩くんがわたしのことが好きだと村松さんに言ったから。


村松さんと一緒にいさせたくなかったんだろうね。

多分、どちらかがすぐに店を辞めることになるって孝浩くんはわかってたんだ。


ずる賢いね。
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