愛のかたち
花火が終わった頃には緊張も花火とともに消えてた。

残ったのはかやくの匂いと楽しいという感情だった。



『そしたら、行こうか。』

そう言って原口さんが立ち上がったのでわたしも立った。



今原口さんと一緒に花火に来ているということはまだ本気で信じられなかった。

憧れの人。

楽しくて仕方がない♪



人の流れに沿って歩き始めたがあまりの多さにあまり進まなかった。

後ろから押されたりもしたので原口さんがわたしの肩の後ろに手を伸ばして人がわたしを押さないようにしてくれた。

この優しさにわたしは

本気で好きになっちゃだめかな・・?

と思ったりもしたけどこれは夢か一生分の幸せなのかもしれないからと自分に言い聞かせていた。



だいぶ人が流れるような広い道路に出ると話もちゃんとできるようになった。

『すみません、気つかってもらってて・・』

お礼を言うと原口さんは

『いや、後ろにいた男たちが新垣ちゃんのこと話してたからね。かわいいとかそんなん。危ないかと思って。』

全然わたしは気付いてなくてそのことに気付いてた原口さんに改めて御礼を言った。

『言ったでしょ?かわいいからって。男と一緒にいても狙われるから大変だね。』

そんなことはないはずだけどちょっと恥ずかしくなった。

『いや、めったにないはずですけど・・』

たぶん顔は赤くなってたと思う。



その時、屋台のお店の方から

『咲貴ちゃん!!!』

すごい大きな声がした。

振り向くとそこには俊くんと恵介くんがいた。

『何やってるの??』

話しかけると原口さんも知り合い?と聞いてきて立ち止まってくれた。

2人は原口さんの姿を見て、噂のイケメンだろうと思っただろうな。

『バイトバイト。もう片付けだけど。』

2人の前には見事に売れてしまって空のイカ焼きの箱があった。

『売れてしまったの??』

『俺らの人気のおかげでね。すごかったよ。』

と誇らしげに言う恵介くんに少しウザさを感じた。

そして原口さんをのけ者にしとくのは申し訳ないんで

『じゃあ、行くね。』

と言ってあいさつをしてその場を離れた。

< 47 / 386 >

この作品をシェア

pagetop