耐雪梅花麗〜愛〜
「鹿恋の生駒どす。よろしゅうお願いします。」

「鹿恋の奈津どす。どうぞよろしゅう。」

「鹿恋の留花どす。よろしゅうお願いします。」

四人もの方を呼んでくれた。皆さん可愛らしいお方で、特に花里さんにはオーラがある。

生駒さんは綺麗な方。

奈津さんはまだ幼さの残る感じ。少し前までは新造だったのだろう。

留花さんは大人っぽい。

「あら、今日は女の方もおられるん?嬉しいわぁ。」

こっちに来た、生駒さんが言う。

「そんな、ありがとうございます。女子がここに来るなんて聞いたこともなかったので少し緊張してるんですけど、そう言って貰えると嬉しいです。」

「いやいや、たまにやけど来られるんで、女の人。まあ、旦那の付き添いがほとんど。こんなところ来たくも無いやろうに。」

「そうなんですか?少し安心しました。」

「そうそう、あなた名前なんて言うん?」

「櫻間凜華です。」

「凜華ちゃんかぁ、可愛い名前やねぇ。名前に劣らず顔も可愛いし、もし此処におったら太夫になってはる気がするわぁ。」

「そんなそんな、お世辞はいいですよ。生駒さんの方が綺麗ですよ。」

「あら鈍感、ほんとに可愛ええのに。(鈍感すぎて逆にイラつくわぁ)まあ、食べてくたさいね。ほな。」
そう言って生駒さんは向こうに行った。

「よし、食べるか、いただきます!」

モグモグ、お、美味しい!いわゆる京料理って言うやつだよね。あ、誠華姉は酔ってるや。だいぶ飲んでるねぇ。と言ってもあの平助くんとか左之さんとか新八さんとかよりは潰れてない。というか、あの三人はもう潰れてる。酔いすぎ酔すぎ。

「ねぇ凜華ちゃん、お酒飲まれへんのん?」

またもや生駒さん登場。え、あ、そっか、ここではもう私は大人だと思う。ていうか桜華も大人だよ。ここは大人の区切りとして…

「お酒、入れて貰えませんか?お酒初めてなんですけど、少し飲んでみたいなぁ、と思いまして…」

「え?お酒初めてなん?じゃあ少しずつにしとこ」

チョロチョロとお酒がつがれる。ごくん、と一口。胸が熱くなるような感じがする。けど、

「美味しい!」

「ほんまぁ、良かったー!あ、凜華ちゃん、敬語外してくださらん?多分歳近いさかい。」

「え、いいの?生駒さん…生駒ちゃん。」

「うん!それでええどす。うち、凜華ちゃんの味方になりますえ。もちろん新撰組の味方になる。ここでこんな事言うのアレやけど、うち、元は武家なんよ。家が佐幕派で、そしたら、倒幕派に家族が殺されてね。身寄りがおらんなったからここに来た。」

そうなんだ…。この時代ではそんな人も多いのかもしれない。

「あと、留花には気をつけて、あの子は長州から来たさかい、何するか分からへん。」

「そうなの?ありがとう!」

つまり、間者の可能性があるって訳か。

「花里さんはこっちよりさかい、仲良くしてはってな。奈津はまだようわかっとらん。まあ、元が農民さかい、関係ないと思っとるんかもしれへん。そやかて、あっちに引かれるかもしれんさかい、そろそろこっちに引き込もうと思うとる。」

「なるほどねぇ、ありがとう生駒ちゃん、これからもよろしくね。もしかしたら男装してくるかも笑」

「分かりやした。またおいでやす。遊女は情報通さかい、しゃんと見分けることが大切どすえ。」

「そうだよねー。だって佐幕派から倒幕派まで色んな客とるんでしょ。」

「うん、今わかっとることは特にあらへんけど、その手の情報がわかったらまた言うさかい。あ、そうそう、花里さんが太夫になるさかい、うちは天神になる。少し高くなるけどちょこちょこ来て欲しいどす。」

「わかったよー!お金貯めとくね。あと、私の佐幕派の友達連れてくる。女子だけど男装させてねー。」

「それはそれは、ありがたい。親の仇もあるさかい、できるだけ情報が欲しいの。」

「じゃあうちも集めとくね。情報。」

「ありがとう!ほな、うちまた違う人相手せなあかんさかい、またなー!」

「うん!じゃあ、よろしくー!」

ということでまた仲間が増えた。良かったー!だけどさー、ここには倒幕派がいる…油断はできない。

「凛華さん言うてはりましたっけ、お酒、どうどす?」

「お願いします。」

うわ、留花さんだ…。

「今、新選組はどうなんどす?どんなことをするんどすか?」

あ、この人本当に倒幕派だ。ここで情報を遠回しに聞いておいて、倒幕派に流そうとしている。

「まあまあですよ。」

こんな曖昧な回答をしながらごくん、とお酒を飲む。

情報を集めるために佐幕派に媚ってるんだ。この人。

この人は口が堅い、と思ったのか、するー、と私から離れていった。

はぁ、留花さんの対応疲れた…。なんて思って首を回して当たりを見る。あれ…みんな酔すぎじゃないですか?

酔いつぶれてないのはあの仏の山南さんと、最年長井上さん。そして近藤局長と私。最後に斎藤さん。驚いたことに、桜華も誠華姉も酔いつぶれている。特に桜華なんてお酒飲むの初めてでしょ、大丈夫?

「近藤局長、なんです?この有様は…。」

「本当だ…。何故みなこんなに酔いつぶれるのだ…。」

「近藤くん、そろそろお開きにしないか?そろそろ帰らないとここにも迷惑だし。」

と山南さん。

「本当だよ近藤さん、山南さんの言うとうりにしよう。」

と井上さん。

「俺は局長に従います。 」

と斎藤さん。

「では、お開きにしよう。すまぬが花里、籠を手配してはくれぬか。」

「了解しました。」

え?籠って誰が乗るの?

「籠って誰が乗るんですか?」

「原田と土方さん。2人は1度酔いつぶれたら、回復するのは次の日の昼だからな。」

と斎藤さん。なるほど、2人は酒に弱いわけですね。と言いながら未だに酒を飲む斎藤さん。酒豪ですね。

「山南さん、源さん、斎藤、凜華くん、すまないが皆を起こすぞ。」

これは…、嫌な予感しかしない。

「は、はい…。」

私の予感は当たったようで、いつもより返事が小さい山南さん、井上さん、斎藤さんであった。








もちろん私の返事も小さい。

「はい…。」


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