耐雪梅花麗〜愛〜
「はぁ、はぁ、はぁ、…ギリギリセーフ…じゃなくて、ギリギリ間に合ったー。」

セーフなんて言ったら質問攻め似合うから、言い換えた。

「はい、今日は三条大橋の辺りを中心に見回ります。じゃあいつも通り別れてくださーい。」

と、沖田さん。え、私は?

「あ、忘れてました。凜華ちゃんは僕について来てください。初めてなんで。」

「あ、はい。」

だっよね〜。安心した。でも、めっちゃ目立つよねー。だって沖田総司と乙女島田の女剣士とほか数名が一緒に歩いてるんだもん。

「ぼーっとしてないで、早く行きますよ。」

「あ、え?はい!ちょっと待ってくださいよぉ!」

バタバタと走る。非常に走りにくい。だって下駄なんだもん。

これで戦うんだなー。結構難しそう。

そんなことを考えながら、早一時間。

「今日は運がいいですね。嵐の前の静けさでなければいいのですが…。」

と、沖田さん。

「そうですよね。大きいことの前って、大概静かなんですよね。」

ここのことは知らないけど、だいたいそんなもんだろう。

「凜華ちゃん、分かりますか?今、殺気を感じました。これが殺気です。刀に手を添えて、いつでも抜けるようにしてなさい。利根さん達はいつも通りです。分かりますね。」

みんな小さく頷く。束縛術を私は知らないから、刀を抜く準備。

「ふう、お前たち、気づくの早いじゃねえか。それに女が刀を腰に差すなどおかしいのではないか?抜け。俺は捕まる気などさらさら無い。そのくらいなら死ぬまでだ。」

不逞浪士達ははそう言って、刀を抜く。7、8人と言ったところか。

「よしましょう。と言っても無駄のようです。 皆さん刀を抜きなさい。」

幸い人通りが少ない。

私は今から人を殺すかもしれない。殺せば誰もが殺人者。でも、大切なものを守るために!

私は刀を抜く!

「威勢のいい女子だ。相手をしようではないか。」

「褒め言葉ありがとう。女子にも守らなければならないものがあるの。それを守るためならなんだってする。だから、私はあなたを殺すことになるかもしれない。」

「結構。まあ、本当に殺せるのか?お前、死ぬぞ。」

「守るための死など怖くないわ。さあ、かかってこぬなら、此方からかかります。」

カキンッ!相手も挑発してくるくらいだから弱い訳では無い。真剣勝負に慣れているような感じだから尚更やりにくい。だけど…、

ザシュッ。
「グハッ!」

「ごめん、死んでもらう。」

周りからは『女子が人を斬った。』『阿修羅だ。』とか、陰口が聞こえたりもする。それでも私は戦う!

もう一人斬った。致命傷は避けたけど。こいつは主要人物っぽかったから生かしとかないとね。

周りを見渡せば次々に束縛されていく。一番隊は新選組の中でも精鋭の人達だって聞いたことある。本当だったんだね。

そして私は目を見開く。

沖田さんが斬られる!後ろから斬られそうだ。

今から相手を斬るのは間に合わない!そうだ、斬られに行くんだ。同じ仲間。そんな大切な仲間が死ぬくらいなら、私が守る!たとえ私が死んだとしても…。

さあ、今なら走れば間に合う!走れ私!

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