新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
『宮坂の地元って、たしか北海道……』

『の、さらに離島ね。山と海ばっかりなほんと田舎で、帰省するにも一苦労だよー』



彼の言葉を引き継ぎ、苦笑した。

すると越智くんがそこで、ふっと頬を緩める。



『けど、好きなんだろ? そういう話し方してる』



やわらかい笑顔で穏やかに問われ、不意に胸が高鳴った。

それを誤魔化すように、私も笑みを浮かべうなずいた。



『……うん。大好きだよ』



答えてから、なんとなく気恥ずかしくなって越智くんから目を逸らし、長い横髪を耳にかける。

夏の終わりの、吹き抜ける風が心地いい。私はほうと小さくため息を吐いた。



『本当は、ずっと地元に残って、実家の喫茶店を継ごうと思ってたんだけどね。親に「いつか継ぐのは構わないけど、もっと広い世界を見ておいた方がいい」って言われて……それに私も、都会の生活に憧れる気持ちもあったし』



苦笑して頬をかきながら、また越智くんに目を向ける。

するとなぜか、彼はやけに真剣な顔で私を見ていて……ドキリとまた心臓が、大きくはねた。



『じゃあ宮坂は、いつか地元に戻るのか?』

『え……あ、どうだろ……実は、将来喫茶店をやりたいって夢はあるんだけどね。でもまだ、全然現実的に考えてはないかな。3年ちょっとしか社会人やってないのにこんなこと考えるのも、身の程知らずな気がするし』



なんとなく焦り、早口気味になる。

越智くんは私の返答を聞くと『そうか』とうなずき、少し表情を和らげたようだった。
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