新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
驚く間もなく、そのまま引き寄せられる。

気づけば私は、彼の腕の中にいた。



「え……っ?! さ、さつきく」

「悪い。『ゆっくり』って言ったそばから」



後頭部に回った彼の手が、私の顔を胸板に押しつけるようにしている。

落とされたつぶやきにドキドキしながら、あまりのことに私は動けない。

こんなふうに触れたのは、病院で目を覚ましたあの日の抱擁以来だ。

自分と同じようで違う、清潔なせっけんの香りが鼻腔をくすぐる。



「明日からは、ちゃんと礼の気持ちを尊重するから……今だけ少し、このままでいさせてくれ」



きつく抱きすくめられているおかげで、首を縦にも横にも振れない。

だけど、拒否するつもりはこれっぽっちもなかった。
吐息とともに彼が続ける。



「……礼が無事で、よかった。またここに戻ってきてくれて、本当に、よかった」

「皐月くん……」



しぼり出すような声に胸が締めつけられて、彼の名前を呼んだ。

散々迷ったのち、私はそっと、その背中に腕を回す。
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